二八七:父と母の汚れたものから生じて
    肉と汚物によって形成される自分の肉体を
    忌むべきものを避けるように、遠くから退けて
    自らがブラフマンとなり、人生の目的を遂げるがよいだろう



詩句二八七【覚書】:★《父と母の汚れたものから生じて》人間は父のシュクラ(精液)と母のショーニタ(経血)から生まれた。最初の時代であるクリタ・ユガでは、人間は自らの意思の力で誕生してきたとされる。だが堕落するにつれて、男女の性の交わりからしか身体を持てなくなった。それゆえ人間は生まれつき穢れた存在と語られる。また太古の昔には、男女の交わりは神の許可を得た後で為された。イエス・キリストの処女降誕説は有名だが、あれは本当にあったことで、人間の尊厳を世に示すためだったとされる。人間の堕落、聖性の喪失は、性を知ったことによるのである。性ゆえの欲望(所有欲、自己延長)が自我を生み出し、自分を相対観に縛り付けていった。
★《忌むべきもの(チャンダーラ)を避けるように》「チャンダーラ」とは、昔のインドのカースト社会で、戒めを破ったりして、カースト外に追放された人を指す。